こんにちは、元・ISO9001事務局のまっつぁんです。
「リスクとか機会とか急に出てきたけど結局なんやねん?」
2015年版から新たに出てきたこの考え方、最初は「なんかややこしそう…」と感じた方も多いはず。 でも実は、そんなに難しい話ではありません。
今回は、リスクベース思考の基本と、現場での実例を交えながら、ざっくりやさしく解説していきます。
リスクベース思考とは?(定義・目的)
リスクや機会を起点にして目的や目標の達成を効果的・効率的に図るアプローチです。
(…とはいっても、これだけではちょっと難しいですよね)
たとえば、高校の文化祭を成功させたいとき、「うまくいかないかもしれないこと(リスク)」を先に考えて、準備しておくと安心ですよね。
- 雨が降ったらどうしよう? → 室内開催に切り替える準備をしておく
- 食材が足りなくなったら? → 多めに仕入れておく or 補充できるお店を決めておく
逆に、「これはチャンス!」と思えることも見逃さない。
- SNSで事前に宣伝したらお客さん増えるかも? → 投稿を用意しておく
こんなふうに、うまくいくように先回りして考えたり、良いことがあればそれを活かす。
それがリスクベース思考なんです!
リスクや機会は、組織の「内部の課題」や「外部の課題」、「利害関係者(ステークホルダー)のニーズ・期待」などを踏まえて検討する必要があります。これにより、自社の置かれた状況に合ったマネジメントが可能になります。
また、これらのリスクと機会は一度決めて終わりではなく、少なくとも年に1回以上、見直しを行うことが推奨されています(マネジメントレビューなどでの再確認が一般的です)。
なお、一度決めたリスク対応やチャンスの取り組みが有効に機能している場合は、無理に変更する必要はありません。継続的に効果があるものは、継続して運用することが望まれます。
ISO9001:2015では、組織が**「リスクおよび機会」**を考慮してQMSを構築・運用することが求められています。
つまり、「なんか起きそうなこと(=リスク)」に備えて、「どう動くか」をあらかじめ考えておこう!という話です。
リスクベース思考の進め方(STEP形式・具体例)
ここからは、現場でありがちなシーンをもとに、「リスクベース思考」がどう役立つかを見てみましょう。
事例①:新人が受注入力を間違えるかも?
【背景】毎年春に新入社員が配属され、営業事務を担当。過去に「型番ミスで製品違い納品」という事故も発生。
【リスク】型番・数量・納期ミス
【対応】Wチェックルール化、マニュアル整備、教育強化
【ポイント】「間違えそう」を想定して仕組みで予防=リスクベース思考!
事例②:主要部品の仕入先が1社だけ
【背景】重要部品の調達先がA社のみ。操業停止リスクあり。
【リスク】供給停止・納期遅延
【対応】B社評価・在庫見直し
【ポイント】調達リスクの分散で安定供給へ。
事例③:機会も見逃さない!
【背景】顧客から追加サービスの要望あり
【機会】満足度向上・差別化
【対応】アンケート・試験導入
【ポイント】チャンスを活かすのもリスクベース思考!
事例④:技術継承が間に合わないかも?
【背景】団塊世代の大量定年退職により、熟練者の離職が相次ぎ、現場では技術やノウハウの継承が追いついていない。
【リスク】技能伝承の遅れ・品質や生産性の低下・クレーム増加
【対応】OJT計画の強化、動画マニュアルの作成、熟練者の再雇用制度を検討
【ポイント】人材リスクも重大な経営課題。早期対応がカギ!
事例⑤:ISOが浸透せず継続できなくなるかも?
【背景】ISO取得後、現場の理解が進まず、日常業務とISOが乖離。改善活動も形骸化している。
【リスク】仕組みの形骸化・品質の維持向上が止まる・顧客信頼の低下
【対応】現場巻き込み型の教育、活動成果の見える化、経営層の関与強化
【ポイント】ISOの“継続と実効性”も重要なリスク管理対象。運用が止まれば品質も下がる!
よくあるミス・監査指摘(事例・対策)
- 「リスク=一覧表を作ればOK」と思い込んでいる → 継続的な見直しが必要
- 「機会」を考えていない → プラス面も意識して行動を
- リスク対応が実行されていない → 計画と実行のつながりを見直そう
まとめ
✅ リスクベース思考とは、「想像して備える」こと。何が起きるかを予想し、それに対して準備しておくという、とてもシンプルだけど効果的な考え方です。
✅ 守り(リスク)と攻め(機会)の両面をバランスよく意識することが、組織の成長や品質向上につながります。
✅ 日々の業務に取り入れることで、トラブルを未然に防ぎ、改善のヒントを見つけやすくなります。特に、ISOのためだけにやるのではなく、“業務の役に立つ”視点で考えることが継続のコツです。
一言: リスク対応と聞くと大げさに聞こえるかもしれませんが、「やばそうなことを先に考えておく」だけでも十分です。起きてから慌てるより、起きる前に考えて動く。それができれば、品質も仕事もグッと安定しますよ。
次回予告: 「内部監査ってなにするの?」にします。
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